学校法人関係

【学校法人】継続法人の前提とは?実務上の留意点を公認会計士が解説!

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いわゆる森友問題の舞台になった幼稚園が今年の3月から休園になります。直接の原因は園児減少による赤字の拡大とのこと。

少子化が進行しているため、このように法人の継続が困難になるケースが今後増えてくる可能性があります。

令和元年度より検討が必要となった「継続法人の前提」はまさにこういった世の中の流れを反映してのものであると考えられます。

今回はこの「継続法人の前提」について解説します。

こんな方におすすめ

  • 継続法人の前提の概要を知りたい
  • 株式会社の場合との違いを知りたい
  • 継続法人の前提が与える影響について知りたい

そもそも継続法人の前提とは?

会計処理の大前提!

普段何気なく行なっている会計処理は企業が継続して運営されることを前提としています。

例えば未収入金などの経過勘定。来年度潰れることが明らかな場合に「来年度入金されるから未収入金を計上する」というにはおかしいですよね。

このように、「来年度も企業が運営できる」という大前提のことを「継続法人の前提」と呼んでいます。

記載する責任は企業側にある

継続法人の前提に関する記載をするのはあくまで企業側の責任です。

公認会計士は記載内容や記載の有無について検討をしますが、企業の継続法人の前提については証明しません。

ここは重要なポイントで、公認会計士が無限定適正意見を出していたとしても、それはあくまで企業側の記載が正しいということについて意見を表明しているということであり、企業の継続性を担保しているわけではありません

企業が「継続法人の前提がない」と記載しており、それが正しく記載されていれば公認会計士は無限定適正意見を出します。

公認会計士が無限定適正意見を出している=潰れないということではないことは重要なポイントです。

学校法人にも適用があるのか?

令和元年度より明文化された!

継続法人の前提という考え方自体が登場したのは2002年であり、導入から20年近くが経っています。

しかし、学校法人においては長らく継続法人の前提は当然あるものとして扱いつつ、計算書類への記載については明文化されていませんでした。

ところが、2019年に監査報告書の様式が変更され、継続法人の前提に関する記載が監査報告書の本文に組み込まれることろなり、「学校法人ももはや逃れられない」と判断され、継続法人の前提について計算書類に記載することについて明文化されました。

学校法人委員会研究報告第34号「学校法人の継続法人の前提に関するQ&A」

学校法人において継続法人の前提を検討する上で基準となるものが「学校法人委員会研究報告第34号」です。

これは監査基準委員会報告書570「継続企業」を学校法人向けに読み替えたものです。内容としては取締役を理事者に読み替えているなど、監査基準委員会報告書の内容と大きく変わるものではありません。

継続法人の前提の検討方法

検討過程は大きく分けて2段階に分かれる

継続法人の前提は大きく分けて以下の2段階で検討します。

  1. 継続法人の前提に重要な疑義を生じさせる事象・状況があるか?
  2. 当該事象・状況を解消させる対応策を講じてもなお、継続法人の前提に重要な不確実性が解消されないか?

①でまずフラグ立てを行い、フラグが立ったものについて詳細を検討し最終的な判断を行うという流れです。

このフラグに該当するものが「継続法人の前提に疑義を生じさせる事象・状況」であり、最終的な判断基準が「重要な不確実性」ということになります。

①継続法人の前提に疑義を生じさせる事象・状況はあるか?

検討の第一段階としてまずフラグ立てを行います。事象・状況については「これに該当したら必ず事象・状況あり!」というものはありません。

継続法人の前提は複合的な要素が絡み合っていますので、画一的な判断をすることは非常に難しいです。

ただし、「こういうものがある事象・状況があるかもよ?」という例示は上記の研究報告の中で取り上げられています。

貸借対照表日において、単独で、又は複合して継続法人の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況としては、例えば、以下のような項目が考えられる。
<財務指標関係>
・ 教育活動収入の著しい減少
・ 継続的なマイナスの教育活動資金収支差額の計上
・ 重要なマイナスの教育活動資金収支差額の計上
・ 継続的なマイナスの経常収支差額の計上
・ 重要なマイナスの経常収支差額の計上
・ 翌年度繰越支払資金の継続的な減少
・ 翌年度繰越支払資金の重要な減少
<財務活動関係>
・ 事業に関連する債務の返済の困難性
・ 借入金の返済条項の不履行又は履行の困難性
・ 新たな資金調達の困難性
・ 債務免除の要請
・ 支払不能すなわち資金ショートに陥るリスクがあること。
・ 債務超過又は債務超過に陥るリスクがあること。
<事業活動関係>
・ 重要な設置校、学部等の募集停止
・ 重大な災害による損害の発生
・ 継続的な学生生徒数の著しい減少
・ 重要な補助金の減額又は不交付の決定
・ 事業活動に不可欠な重要な権利の失効
・ 事業活動に不可欠な人材の流出
・ 事業活動に不可欠な重要な資産の毀損、喪失又は処分
・ 法令又は所轄庁の規制に基づく重要な事業の制約
<その他>
・ 巨額な損害賠償金又はデリバティブ取引の解約に伴う損失の負担の可能性
・ 不祥事などによるブランド・イメージの著しい悪化

引用元:学校法人委員会研究報告第34号「学校法人の継続法人の前提に関するQ&A」

収支差額などの財務的なものから人材の流出やブランドイメージなど質的な側面まで様々な例が挙げられています。

これに一つでも該当したら即継続法人の前提に疑義あり!となるのではなく、あくまでその他の要素も勘案して総合的に判断します。

②当該事象・状況を解消させる対応策を講じてもなお、継続法人の前提に重要な不確実性が解消されないか?

事象・状況があることを認識すると、次の段階として「事象・状況を解消できないか?」という検討を行います。

資金繰りが厳しい場合は売れる資産はないか、金融機関からの借入は可能かなどの資金策を検討しますし、重要な人材が流出した場合は代わりの人材の確保の目途は立っているのか、といった検討を行います。

この検討の結果、「事象・状況はあるが対応策を講じた結果重要な不確実性はなさそうだ」と判断できれば、継続法人の前提に関する記載は不要です。

一方で「万策尽きた…」という状況の場合は継続法人の前提に重要な不確実性があるとして注記が必要になります。

株式会社と学校法人の継続法人の前提に関する相違点

疑義はあるが不確実性がない場合の対応が異なる

株式会社と学校法人ではとも「継続企業の前提」「継続法人の前提」とほぼ同内容の考え方が存在します。

しかし、法人としての性格の違いから相違点があります。

それは「継続法人の前提に疑義を生じさせる事象・状況はあるが対応策の結果重要な不確実性はない」と判断した場合の取り扱いです。

株式会社は「開示」

株式会社で継続企業の前提に疑義があるが重要な不確実性がないと判断した場合、有価証券報告書の計算書類ではない部分での開示が求められています。

これは株式会社には株主や債権者など利害関係者が非常に多くいるため情報を積極的に開示する必要があるためです。

学校法人は「対応なし」

一方で学校法人の場合、継続法人の前提に疑義があるが重要な不確実性がないと判断した場合、特段の対応は求められません

これは学校法人には利害関係人が少なく、あくまで計算書類は所轄庁が補助金が正しく使われているかを確かめるためのものという整理が関係しています。

継続法人の前提が与える影響

継続法人の前提に疑義がある法人に補助金は出るのか?

学校法人に関する継続法人の前提の取り扱いが明らかになったのは令和元年度からのため、まだ具体的な事例などはあまり多くありません。

これから行政監査などで事例を積み重ねていくことになります。

しかし、懸念としてあるのは「継続法人の前提に重要な不確実性あり」と注記した法人に補助金が出るのか?という点です。

学校法人が自ら「法人運営がかなり厳しい」と開示し、公認会計士が「かなり厳しいという学校法人の記載は正しい」と証明した場合、所轄庁としてどう対応するのか、この点は非常に慎重に検討が必要です。

元々運営が厳しい学校法人が継続法人の前提に関する注記をした結果、補助金不交付となるととどめを刺される格好になります。

一方で、学校法人をつぶさないために「重要な不確実性はあるけど開示しない」というのは制度の趣旨に反しますのでできません。

この辺の取り扱いについては今後事例が積み重なっていくことで明らかになってくると考えられます。

まとめ

  • 継続法人の前提は会計処理の大前提
  • 学校法人にも令和元年度から適用あり
  • 検討は2段階。フラグ立てを行い詳細検討
  • 継続法人の前提の影響はまだまだ未知数

少子化の進行で学校法人は生徒数の減少が続き非常に厳しい状況が続いています。

まだまだ事例の少ない「継続法人の前提」ですが、自身の法人で該当しないか改めて確認するようにしましょう。

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hiroya

公認会計士・税理士・行政書士。慶應義塾大学在学中に公認会計士試験に合格し、有限責任監査法人トーマツへ入社。その後、2017年独立・開業。「公認会計士・税理士をより身近に」をコンセプトに情報発信を行い、SNSを通じて多くの相談に応じている。

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