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【公認会計士】会計不正が減少?零細事務所における現状を分析!

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・不正会計が減っているって本当?

・不正会計は大企業だけじゃないの?

・零細事務所における現状ってどんな感じ?

2021年8月25日の日経新聞で「会計不正、公表46%減 昨年度 在宅勤務普及、発見に壁」という記事が出ました。

今回は公認会計士が私一人である零細事務所における現状も踏まえ、上記記事について考えてみます。

会計不正を公表する企業が減少?

2021年3月末までに公表した企業は大幅減

今回の日経の記事は日本公認会計士協会が2021年7月29日に公表した「経営研究調査会研究資料第8号「上場会社等における会計不正の動向(2021年版)」」をもとにしています。

この研究資料によりますと、公表された不正会計は以下の通り推移しています。

2019年3月末:33件

2020年3月末:46件

2021年3月末:25件

引用元:経営研究調査会研究資料第8号「上場会社等における会計不正の動向(2021年版)」

コロナ禍が直撃した2021年3月期は前年比で46%減となっております。

単純には喜べない会計不正減

46%も会計不正が減ったなら喜ばしいではないか、と思いますが事態はそう単純ではないようです。

コロナ禍で在宅勤務が取り入れられ、大手監査法人は特に対面でのやり取りが制限されました。

その結果、会計不正が見過ごされているのではないか?ということが日経に記事内で提起されております。

会計不正をするのは大企業だけでは?

中小企業でも会計不正はある

大企業のようにステークホルダーが多くない中小企業は一見会計不正をする理由がないように思えます。

しかし、実際は多くの会計不正が中小企業でも行われています

監査対象外のため粉飾決算などで明るみにはでませんが、税務調査で「脱税」という形で発覚します。

また、私が多く担当している学校法人においても非営利であるにも関わらず、会計不正が行われることがあります。

理由は様々ですが、企業の規模や業種に関係なく、会計不正は行われています。

零細事務所における現状は?

大手監査法人とは状況が大きく異なる

私のような一人で監査を行う零細事務所における現状を考えてみます。

当然ですが、大手監査法人とはリソースや監査のやり方、対象企業も大きく異なります。

在宅勤務の広がりで対面の機会減少→△

2020年からのコロナ禍で私も在宅勤務を採用しています。

監査作業自体は資料があればパソコンで出来ますし、資料の入手はメールやクラウドを介して可能です。

しかし、私が相手にしている企業はPC操作に不慣れであったり、オンラインに慣れていない方が多いです。

中小企業は大企業のように設備投資に回せる資金が少なく、コロナ禍であっても在宅勤務やオンライン上での作業に移行できない場合が多いです。

そのため、結果的に対面でのやり取りが多くなり、大手ほど対面の機会は減っていないと考えられます。

精査が可能

監査は試査が原則ですので、通常はサンプリングなど大手が行うような監査をします。

しかし、不正の兆候があったり明らかに何かを隠している様子がある場合は精査をすることが規模的に可能です。

通帳の入出金をすべて調べたり、現物をすべて確認したりすることができます。

そのため、経営者が何かを隠そうとしても発見できるケースが多いと考えられます。

こちらの記事のように見過ごす会計士もいるようですが…。

【不適切会計】認定こども園の不適切会計を公認会計士が考察!

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「不正」より「不適切」の方が多い印象

「不正」は「粉飾してやろう!」「脱税してやろう!」という明確な意図をもって行われるものだと思います。

中小企業でも税金を逃れるために粉飾をするというケースは確かにあります。

しかし、中小企業ではどちらかといえば、「え、そうだったの?」「知らなかった」「そういう意図ではなかった」という意図せざる「不適切」な処理が多い印象です。

これは公認会計士として指導をして修正・改善をしていただければ会計不正にはならないと思います。

綿密な計画のもとスキームを組んで…という会計不正は中小企業では少ないと考えられます。

「それ脱税ですよ…」という相談が多いのは事実ですが…。

リソース的に限界がある

今までは大手とは違って零細の方が見つけられるぞ!というような書きぶりになりましたが、今度は零細の弱点です。

大手と比べて圧倒的なリソース不足があります。

人員もそうですし設備面、ノウハウなどは大手には到底及びません。

職業的懐疑心は当然発揮し、監査計画も立て、万全の態勢で監査をしているつもりではありますが、限界はあります。

自分一人で監査業務を回すことになりますし、監査以外の事務所運営なども一人で行うとなると100%監査だけをする大手の監査チームより監査の精度は荒くなりがちです。

経営者との距離が近すぎる

大手監査法人で働いていた時は監査先の経営陣はかなり遠い存在でした。

下っ端のスタッフでは直接会うことはなく、インターネットのニュースで見るような存在でした。

しかし、中小企業への監査業務を提供する場合、前職と比べると距離は圧倒的に近くなります

会計の相談はもちろん、家族の話、事業の話などかなりプライベートな部分も知ることが多いです。

それが零細事務所のやりがいでもありますが、独立性を確保することを難しくすることにもつながります。

当然、監査をする際は監査人として独立性を保持し、経営者の言動にも職業的懐疑心を発揮します。

しかし、あまりにも経営者と距離が近すぎるため、大手にいた頃と同程度の懐疑心を持てているかというと少し疑問はあります。

零細事務所はなれ合い監査にならないように自身を律することが非常に大事です。

まとめ

  • 2021年3月末までの会計不正は大幅限
  • しかし、コロナ禍での制約で見過ごしている可能性も
  • 零細事務所は大手とは状況が異なる
  • 大手にはできないことができることもあるが、零細にはできないこともある

会計不正というと大企業での事例が盛んに取り上げられます。

上場企業の不正というのは目立ちますからね。

しかし、我々のような零細事務所が関与する中小企業での会計不正は行われています。

そこにどう対処するかが零細事務所が生き残れるか否かにつながると思います。

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hiroya

公認会計士・税理士・行政書士。慶應義塾大学在学中に公認会計士試験に合格し、有限責任監査法人トーマツへ入社。その後、2017年独立・開業。「公認会計士・税理士をより身近に」をコンセプトに情報発信を行い、SNSを通じて多くの相談に応じている。

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