税務関係

【源泉徴収】共同受任の源泉徴収はどうやるの?税理士が解説!

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弁護士の先生が一つの案件を複数人で受任した場合の源泉徴収は少し特殊です。

今回は「共同受任」の場合の源泉徴収について解説します。

こんな方におすすめ

  • 共同受任の源泉徴収の概要を知りたい
  • 共同受任の源泉徴収を行う際の注意点を知りたい

そもそも「共同受任」とは?

複数の弁護士で一つの案件を担当すること

共同受任は主に弁護士の先生が該当することが想定されます。

一つの事件について同じ弁護士の中で複数の弁護士が関与したり、他事務所の弁護士とタッグを組んで取り組んだしする場合が該当します。

共同受任については、複雑な案件など一人の弁護士では知識が足りない場合などに相互に補完しあうためによく行われるものではあります。

共同受任の場合の源泉徴収方法

ポイントは報酬の受領方法!

共同受任の場合の源泉徴収の方法は大原則は通常の源泉徴収と同じです。ただし、計算方法について少し注意が必要です。

計算方法を決定する上で重要なポイントが「報酬の受領方法」です。

共同受任の場合、以下の二つの報酬受領方法が想定されます。

  1. 共同受任した弁護士それぞれの口座に直接クライアントが振込
  2. 代表弁護士の口座にクライアントは一括で振込、代表弁護士が他の弁護士に振込

クライアントが支払う報酬の額面は同じなのに、上記2つの方法で源泉徴収するべき金額が変わってしまうことがあるので注意が必要です。

①共同受任した弁護士それぞれの口座に直接クライアントが振込

この方法は特に注意すべき点はありません。

弁護士それぞれがクライアントと契約を結んでいるといった状況が想定されます。

そのような場合は通常の源泉徴収と同じです。つまり、クライアントに請求する金額は、クライアントと契約した報酬額から、報酬額の10.21%(100万円超の部分は20.42%)を源泉徴収税額として差し引いた金額となります。

クライアント側が弁護士それぞれからの請求に基づき、それぞれの口座に振り込みます。

【例①】

共同受任した案件についてクライアントへ弁護士A・弁護士B・弁護士Cがそれぞれ以下のように請求した。

弁護士A:報酬5,000,000円-源泉徴収税額918,900円=4,081,100円

弁護士B:報酬3,000,000円-源泉徴収税額510,500円=2,489,500円

弁護士C:報酬2,000,000円-源泉徴収税額306,300円=1,693,700円

クライアントが支払う総額:報酬総額10,000,000円 源泉徴収税額1,735,700円 差引金額8,264,300円

②代表弁護士の口座にクライアントが一括で振込、代表弁護士が他の弁護士に振込

このケースは注意が必要です。

このケースの場合、代表弁護士は「ただ代わりに受け取っただけだから」と安易に考えてしまうと税務署から「代表弁護士さん、売上の計上額違いますよ?」とお尋ねが来てしまう可能性があります。消費税の金額が大きく変わってしまう可能性がありますので、慎重に整理しましょう!

このケースの場合は代理受領と認められるか否かが判断の分かれ道になりますので、それぞれ解説します。

ケース①:代理受領と認められる場合

事前に共同受任する弁護士が連名で契約しており、報酬の按分割合が契約書上明確になっている場合にクライアントが一括で代表弁護士の口座に入金したというケースが想定されます。

このようなケースは上記①の場合と同じです。ただし、請求する源泉徴収税額は注意が必要です。

【例②】共同受任した案件(報酬総額1000万円)についてクライアントへ請求を行った。ただし、契約上、弁護士A・弁護士B・弁護士Cの按分割合は5:3:2となっている。

クライアントへの請求額:報酬総額10,000,000円 源泉徴収税額1,735,700円 差引金額8,264,300円

[内訳]

弁護士A:報酬5,000,000円-源泉徴収税額918,900円=4,081,100円

弁護士B:報酬3,000,000円-源泉徴収税額510,500円=2,489,500円

弁護士C:報酬2,000,000円-源泉徴収税額306,300円=1,693,700円

ここで、源泉徴収税額は((10,000,000-1,000,000)×0.2042+102,100)=1,939,900円ではないことに注意しましょう。

報酬総額は1,000万円ですが、あくまで弁護士それぞれが請求していることが前提になります。よって、会計処理は以下のようになります。

上記例②について、クライアントから代表弁護士Aの口座に8,264,300円の入金があった。

現預金 8,264,300円 / 売上 5,000,000円

源泉税 918,900円  / 預り金 4,183,200円

あくまで弁護士Aの売上は500万円、差分は弁護士BとCの分を代理で預かったという処理になります。

ケース②:代理受領と認められない場合

一方で、代表弁護士が単独で受任し、合同事務所内で業務委託契約をしている他の弁護士と共同で行った場合、形としては共同受任ですが、会計上は少し様子が変わってきます。

このパターンでは、代表弁護士が単独受任し、他の弁護士に外注した、ととらえられてしまいます。

【例③】代表弁護士Aはクライアントより案件を受任し、自身が所属する法律事務所内で弁護士BとCと業務委託契約を締結し共同受任案件として扱った。代表弁護士はクライアントへ報酬1000万円を請求した。

クライアントへの請求額:報酬総額10,000,000円 源泉徴収税額1,939,900円 差引金額8,060,100円

報酬総額は例①・②と変わらず1000万円であるにもかかわらず、源泉徴収税額が1,939,900円と他の例と異なっています。

共同受任の実態によってクライアント側で源泉徴収する金額も変わってしまうので、クライアント側で源泉徴収の過不足が発生しないよう、しっかり整理しましょう。

会計処理は以下のようになります。

上記③について、クライアントから代表弁護士Aの口座に8,060,100円の入金があった。

現預金 8,060,100円 / 売上 10,000,000円

源泉税 1,939,900円  /

売上の金額が例②の2倍になっています。ここがポイントです。

共同受任で整理を間違えると代表弁護士の売上が著しく大きくなる可能性があるので注意が必要です。

免税事業者は課税売上1000万円まで、簡易課税制度の適用が課税売上5000万円まで、と売上は消費税に大きな影響があります。

本来は共同受任した複数人の弁護士で按分するべき売上が一括で代表弁護士の売上として計上されてしまうと非常に影響が大きいので注意が必要です。

さらに、この例③の場合、弁護士B・Cへの支払いは外注費という扱いになります。

その結果、代表弁護士が納税義務者である場合、代表弁護士が源泉徴収をして納付するという手間も発生します。

代表弁護士Aは共同受任した弁護士B・Cにそれぞれ以下のように報酬を支払った

弁護士B:報酬3,000,000円-源泉徴収税額510,500円=2,489,500円

弁護士C:報酬2,000,000円-源泉徴収税額306,300円=1,693,700円

代表弁護士Aが支払う源泉徴収税額816,800円

まとめ

  • 共同受任の源泉徴収は「報酬の受領方法」がポイント
  • 代表弁護士が一括で受領する場合は注意が必要
  • 一括受領の場合は消費税の問題が出てくる

複数の弁護士が関与する共同受任ではクライアントに大きな付加価値を提供できます。

一方で税金の面からみると注意すべき点がいくつか存在ます。

いくら代理受領だと主張しても税務署は客観的な証拠がなければ認めてくれません。共同受任をする際は税務上の問題があることを頭に入れて事前に整理する必要があります。

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hiroya

公認会計士・税理士・行政書士。慶應義塾大学在学中に公認会計士試験に合格し、有限責任監査法人トーマツへ入社。その後、2017年独立・開業。「公認会計士・税理士をより身近に」をコンセプトに情報発信を行い、SNSを通じて多くの相談に応じている。

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