学校法人関係

【学校法人】特別収支は限定列挙?公認会計士が解説!

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日々記帳していると様々な取引が発生します。その中には毎日見るようなものもあれば、年に1回見るか見ないかという臨時的なものもあります。

今回は学校法人における特別収支について解説していきます。

こんな方におすすめ

  • 学校法人における特別収支について知りたい
  • どんな収支が特別収支に計上できるのか知りたい

学校法人の特別収支は限定列挙!

臨時的・高額なものであっても該当しなければ計上しない

結論から言うと「学校法人の特別収支は限定列挙」です。

「この取引年に何回も出てこないし額も高額だな…特別収支に計上!」というように自由に計上することができません。

これは企業会計との違いで、企業会計は企業の判断で臨時的であったり、金額が大きい場合は特別利益や特別損失として計上できます。

一方で学校法人の場合は限定列挙ですので、金額がたとえ1円であっても該当すれば特別収支に計上し、反対に該当しなければどんなに高額でも特別収支には計上しない、ということになります。

学校法人の特別収支はこれだけ!

学校法人の特別収支は各種通知などで以下のものに限定されています。

①特別収入

  • 資産売却差額
  • 施設設備寄附金
  • 現物寄附
  • 施設設備補助金
  • 過年度修正額
  • デリバティブ解約益

②特別支出

  • 資産処分差額
  • 有姿除却等損失
  • 有価証券評価差額
  • 過年度修正額
  • 災害損失
  • デリバティブ解約損
  • 退職給与引当金特別繰入額

限定列挙の根拠は?

①「学校法人会計基準の一部改正に伴う計算書類の作成について(通知)」(25高私参第8号)

平成26年度の学校法人会計基準大改正の際に文部科学省が公表した通知です。この通知の中に特別収支が限定列挙であることがわかる部分があります。

該当箇所を引用します。

(3)特別収支
① 新基準第5号様式に定める「特別収支」とは、特殊な要因によって一時的に発生した臨時的な事業活動収入及び事業活動支出をいい、新基準第15条第3号に定める「前2号に掲げる活動以外の活動」に係る事業活動収入及び事業活動支出をいう。
② 特別収支には、「資産売却差額」、「施設設備寄付金」、「現物寄付」、「施設設備補助金」、「資産処分差額」、「過年度修正額」、「災害損失」及びデリバティブ取引の解約に伴う損失又は利益が該当するものとする。「災害損失」とは資産処分差額のうち、災害によるものをいう。
③ 平成23年2月17日付け22高私参第11号「退職給与引当金の計上等に係る会計方針の統一について(通知)に基づき、退職給与引当金の計上に係る変更時差異を平成23年度に一括計上せず毎年度均等に繰り入れる措置によっている場合の「退職給与引当金特別繰入額」についても特別収支に該当するものとする。

引用元:学校法人会計基準の一部改正に伴う計算書類の作成について(通知

②と③で具体的な勘定科目に言及していますが、注目はいずれも「〇〇」というように他にもありうることを示唆する表現がない点です。

また、同通知を読み進めると特別収支に言及している点がもう1点あります。当該箇所では有姿除却について定義されています。

Ⅱ 固定資産の評価等の会計処理の取扱い
固定資産の評価等の会計処理の取扱いは、次のとおりとする。
1.固定資産の評価
近年、大規模な災害等により学校法人が保有する校地校舎等の固定資産の使用が困難となり、かつ処分もできないような状況が生じている。そうした状況にある固定資産について、資産計上を続けることは学校法人の財政状態を適切に表さないと考えられることから、貸借対照表の資産計上額から除くことができることとする。

(1)学校法人が保有する有形固定資産又は無形固定資産について、現に使用することをやめ、かつ、将来も転用するなどにより、使用する予定のないものについては、理事会及び評議員会(私立学校法第42条第2項の規定に基づき、寄附行為をもって評議員会の議決を要することとしている場合に限る。)の承認を得た上で、備忘価額を残して貸借対照表の資産計上額から除くことができるものとする。

(2)この損失の処理科目は、事業活動収支計算書の「特別収支」の大科目「資産処分差額」に小科目「有姿除却等損失」等を設けて表示するものとする。

引用元:学校法人会計基準の一部改正に伴う計算書類の作成について(通知

②学校法人委員会実務指針第 45 号

上記通知について、実務上の取り扱いについて整理したものが日本公認会計士協会が公表した学校法人委員会実務指針第45号である『「学校法人会計基準の一部改正に伴う計算書類の作成について(通知)」に関する実務指針 』です。この中で資産処分差額について追加で言及があります。

なお、有価証券の時価の著しい下落による有価証券評価損(有価証券評価差額)は、「資産処分差額」に含まれるので、特別収支に該当する。

引用元:学校法人委員会実務指針第45号 Q2-4

限定列挙が追加されたわけではなく、限定列挙されている科目の中身について明らかにされた部分です。

以上、①と②について整理すると上記で列挙したような勘定科目のみが特別収支に計上することとされております。

まとめ

  • 学校法人の特別収支は限定列挙
  • 特別収支に該当すれば金額の多寡にかかわらず計上
  • 特別収支に該当しなければ金額の多寡にかかわらず計上しない

学校法人会計は非常に特殊で、企業会計の感覚で取り組むとうまくいかないポイントが多くあります。特別収支もその一つです。

特殊な会計であることを理解した上で会計処理を進めていく必要がありますね。

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hiroya

公認会計士・税理士・行政書士。慶應義塾大学在学中に公認会計士試験に合格し、有限責任監査法人トーマツへ入社。その後、2017年独立・開業。「公認会計士・税理士をより身近に」をコンセプトに情報発信を行い、SNSを通じて多くの相談に応じている。

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