・学校法人にも「30%ルール」は適用されるのか?
・計算の基準になる「支払資金残高」って何?
・具体的な計算方法が知りたい
今回は保育所に適用される30%ルールを学校法人が運用する保育所に適用する場合について解説します!
そもそも「30%ルール」とは?
余剰資金抑制のための制限!
学校法人で幼稚園のみを運営されている方にはあまりなじみがないかもしれませんが、保育所ではよく耳にする「30%ルール」。
長期安定的に経営していくために一定程度の計画的な積み立ては必要です。
しかし、必要以上の積み立ては保育所の適正な運営を阻害する可能性があるため、適正な水準での積み立てを促す目的での規制になっています。
具体的には以下の算式によりお金が余っていないかを判定します。
当期末支払資金残高≦委託費収入×30%
残高が30%超の場合は積立、それでも超えている場合は加算停止
上記算式により計算した結果、当期末時点の支払資金残高が委託費収入の30%を超えてしまっている場合は追加での積み立てをまず検討します。
将来的に発生が見込まれる経費について、長期・安定的に経営ができるように計画を策定し積立預金として積み立てます。
それでも30%を超えてしまっている場合は委託費の改善基礎分について加算停止措置が取られます。
必要以上にお金が余っている場合は加算しなくても大丈夫だよね?という感じですね。
学校法人に適用する際の問題点
「支払資金残高」って何?
学校法人もここ最近、保育所を幼稚園に併設して運営するところが増えてきました。
幼稚園には私立学校法が適用されますが、保育所には社会福祉法が適用されますので、学校法人といえども上記の「30%ルール」は適用されます。
そこで問題になるのが「支払資金残高」って何?という疑問です。
「繰越支払資金」とは異なる
ここで社会福祉法における「支払資金残高」の計算方法を見てみましょう。
支払資金残高=流動資産-流動負債
※棚卸資産や引当金を調整する必要があるが説明簡便化のため省略
支払「資金」残高といいつつ、純粋な現預金以外も含まれるような計算式になっています。
一方で、学校法人会計で出てくる似ている単語の「繰越支払資金」についてみてみましょう。
繰越支払資金=貸借対照表の現預金残高
こちらは純粋な現預金になります。
このことから、30%ルールで利用する「支払資金残高」は学校法人会計で出てくる「繰越支払資金」とは異なることがわかります。
ではどう計算するのでしょうか?
前期末残高に当期資金収支差額を加算して計算する
学校法人における支払資金残高は以下のように計算します。
当期末支払資金残高=前期末支払資金残高+当期資金収支差額
前期末支払資金残高については過去からの「当期資金収支差額」の積み重ねなので、「当期資金収支差額」が肝になります。
「当期資金収支差額」の計算方法
これについては日本公認会計士協会が公表している「学校法人委員会研究報告第21号」に記載があります。
具体的には以下の「A」から「B」を差し引いて計算します。
いずれも学校法人会計の資金収支計算書における大科目になります。
A | B |
学生生徒等納付金収入
手数料収入 寄付金収入 補助金収入 資産運用収入 資産売却収入 事業収入 雑収入 借入金等収入 (何)引当特定預金からの繰入収入 貸付金回収収入 |
人件費支出
教育研究経費支出 管理経費支出 借入金等利息支出 借入金等返済支出 施設関係支出 設備関係支出 資産運用支出 貸付金支払支出 |
社会福祉法人では貸借対照表から計算する支払資金残高が学校法人では資金収支計算書から計算するというところが面白いですね。
まとめ
- 30%ルールは余剰資金抑制のためのルールで学校法人にも適用
- 「支払資金残高」≠「繰越支払資金」
- 資金収支計算書から「当期資金収支差額」を計算して求める
学校法人で幼稚園と保育所を運営していると、それぞれ適用されるルールが異なるため頭の切り替えが必要になります。
幼稚園では必要なかった考え方やルールがあることが多いので、運営する際は注意が必要です。