最近何かと話題を集めている企業主導型保育事業。
幼稚園を運営する学校法人においても従業員の福利厚生のために応募して採用されたケースが複数あります。
今回は企業主導型保育事業の余剰金について、学校法人が運営している場合の注意点も含めて解説していきます。
こんな方におすすめ
- 企業主導型保育事業の余剰金の取り扱いを知りたい
- 学校法人が運営している場合の注意点を知りたい
そもそも企業主導型保育事業とは?
企業主導型保育事業は「従業員のための保育園」!
企業主導型保育事業の目的は運営主体である公益財団法人児童育成協会のHPで以下のように記載されています。
この事業は、多様な就労形態に対応する保育サービスの拡大を行い、保育所待機児童の解消を図り、仕事と子育ての両立に資することを目的としています。
引用元:企業主導型保育事業ポータル
保育園に預けられないから働けない…そういった従業員の悩みを解決するための保育の受け皿として企業主導型保育事業が始まりました。
全国で多くの施設が助成を受けており、令和元年度は3,768施設、86,695人分が助成されました。
保育の受け皿の拡大は確実に実現していますね。
企業主導型保育事業の余剰金の取り扱い
基本は単年度精算。学校法人にはない考えなので注意!
企業主導型保育事業を効率的に運営し、年度末時点で余剰金が発生した場合は注意が必要です。
企業主導型保育事業を含め、保育園に支出された助成金は単年度で精算が基本となっています。
つまり、余ったら返さないといけません。
これは学校法人ではない考え方なので、学校法人で企業主導型保育事業を運営している場合は注意が必要です。
手元に残す方法:積立資産への繰り入れ
とはいえ、余ったお金を毎年すべて返してしまうと、経営がうまくいかなくなった時に一気にピンチになります。
そこで、企業主導型保育事業で発生した余剰金は長期的に安定した施設運営を確保するために、運営費の助成金の範囲内で積立資産とすることが認められています。
認められている積立資産は4種類のみ!
じゃあ何でも名目つけて積立資産にすればすべての余剰金を手元に残せるじゃないか!と思いがちですが、それは違います。
積立資産として計上できるものは以下の4種類のみに限定されています。
- 人件費積立金:企業主導型保育施設の人件費の類に属する経費にかかる積立資産
- 備品等購入積立資産:企業主導型保育施設における業務省力化機器をはじめとした施設運営費・経営上効果のある物品を購入するための積立資産
- 修繕積立資産:企業主導型保育施設及び附属設備又は機器器具等備品の修繕に要する費用にかかる積立資産
- 保育所施設・設備整備積立資産:企業主導型保育施設の将来の建物、設備の整備・改善等にかかる積立資産
目的外の取り崩しも禁止!行った場合は返金!
4種類しかないのはわかった。じゃあ名目はこの4種類にしておいて違う目的に使ってしまおう、と目的外利用を企む可能性もありますが、これも当然ダメです。
積立資産については取り崩した際に何に充てたかを明確にしなければなりません。
充てた先が積立資産の目的外のものであると、取り崩した分は返金しなければいけません。絶対にやめましょう。
専用口座での管理が必要!
また、積立資産については対応する預金を専用の口座で管理しなければいけません。
これも目的外の取り崩しを行っていないかを明確にするために必要な対応です。
ただし、専用口座への入金自体は年度をまたいでも問題ありません。
余剰金が発生しているかは決算を組んでみないとわかりませんので、期中に会計処理だけしておき、実際の資金移動は余剰金が決まった翌年度に行うという処理で問題ありません。
会計処理は以下のようになります。
【当年度】決算を組んだ結果、余剰金が100発生することとなったため、全額修繕積立金とすることとした。
修繕積立資産繰入支出 100 / 預金① 100
BS:修繕積立特定資産 100
※預金①の口座残高はあくまで預金①+修繕積立特定資産の合計額であるため、預金残高は変わらない。
【翌年度】前年度に積立資産に繰り入れた100について専用口座(現預金②)に入金した
現預金② 100 / 現預金① 100
まとめ
- 企業主導型保育事業は「従業員のための保育園」
- 余剰金の積み立ては4種類のみ認められている
- 目的外取り崩しは禁止・専用口座も必要
学校法人で幼稚園を運営していると、保育園特有の論点に気が付かないケースがあります。
幼稚園と保育園、頭の切り替えが必要ですね。